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最高裁判所第二小法廷 昭和24年(れ)863号 判決 1949年7月09日

主文

本件上告を棄却する。

理由

辯護人池辺甚一郎の上告趣意第一點同第二點について。

わが国在留の朝鮮人が、たとえ、故国に引揚げるにしても、正規の手續を經ないで、密航することは、原判決掲記のごとき連合国最高司令官の各覺書に示された同司令官の日本国政府に對する指令の趣旨に反することは、右各覺書の内容に照し明らかであり、連合国最高司令官の日本国政府に對する指令の趣旨に反する行爲が、連合国占領軍の占領目的に有害な行爲であることは、昭和二一年六月一二日勅令第三一一號第二條第三項に規定するところである。從って原判決が、判示のごとき被告人の所爲に對し、同勅令を適用して處斷したのは正當であり、また、右のごとき被告人の密航の所爲が、朝鮮人の朝鮮渡航に關する正規の手續を規律した右覺書の趣旨に反するものであることは、右覺書の記載内容に照し極めて明瞭であるから、原判決が右被告人の所爲はいかなる點において、右覺書の趣旨に反するかを説明しなかったとしても、何ら、所論のごとき違法あるものとは云えない。論旨はすべて理由がない。

よって、刑訴施行法第二條、舊刑訴第四四六條に從い主文のとおり判決する。

右は全裁判官一致の意見である。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山 茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎)

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